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2012年12月13日木曜日

あなたのために買い付けて来ました。


 洋服の販売店がある。小さな商店街に立地する婦人服の販売店である。従来は、店主がこれまでの実績に沿って、自身の感覚で買い付けをしてきたのである。それが売上を減らして来た。店頭に並ぶ婦人服は、季節ごとに値札の価額を下げて、バーゲンセールでほとんどを投げ売りしてしまう。それでは、仕入コストを回収するのがやっとであり、新しく品揃えを充実させるなんていう展開はとても考えられない。

 たとえば、次のような工夫はできないものだろうか。来店者と話して、どんなテイストの洋服が欲しいかを聞いてみる。形状、色柄、素材、価格などなど、来客者の要望を聞きとっていく。その要望に沿う服を店主が買い付けにいくのである。個別の来店者が欲しいと思う服をプロの目で買い付ける。欲しいものが、欲しい価格で提案されれば、来店者はそれをその価格で購入してくれるだろう。もちろん、店舗には、提案的な洋服を買いそろえておいてもよい。ただし、受注買い付け販売による販売を収益の中心に据えるようにしていく。

 購入者の希望する価格によっては、買い付けコストを掛けすぎない工夫は必要となるだろうが、「あなたのために買い付けて来ました。」ということは、来店者の購買経験を充実させ、次の注文につながるのではないだろうか。「こんな服を探しているのですが」と店で聞いた時に、「そういうのは当店では扱っていないのですよ」と返されることがある。店舗のドメインは、経営戦略の軸となるものであるが、季節ごとのバーゲンセールで売上のほとんどを得ている店舗があるとすれば、売買構造を根本的に見直してみる価値があるのではないだろうか。



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