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2013年8月31日土曜日

産学合同インターンシップを振り返る

 サンアクアTOTO(株)での産学合同インターンシップは、8月30日(金)までで、10日間の日程を終えました。社長をはじめとする社員の皆さん、ファシリテーターやアドバイザーとしてご参加下さった企業と学校関係の皆さん、そして、研修生の皆さんに、まず感謝を申し上げたい。同社は、重度障がい者雇用の企業として、製品の品質、仕事の安全性、作業の負担軽減を追求なさっている。私は、2年目となった今回のインターンシップのスローガンを「実作業者の立場に寄り添った改善提案を行うこと」定め、研修生の皆さんには、それを常に意識しながら、実習やヒアリング調査、試作など、必要な活動に取り組んで頂いた。日を追うごとに、研修生たちは、自分たちで必要な活動を話し合って作り出していった。対象とする作業セルを担当する方のみならず、関連する他の社員の皆さんへのヒアリングを通じて、改善しようとしているセルが会社の業務プロセス全体の中でどのように位置づけられているのか、公式非公式のどのような人間関係の中で、担当の社員さんが仕事をしているのかを明らかにしていった。また、会社内外の生産工程に目を向け、改善のために取り入れられる工夫を集めて、それを試作し、具体的な図面に起こしていった。2チーム各4名、合計8名の研修生たちは、どんどんと有機的に連係して、ハード(機材・治具)とソフト(メンタル・投資回収)の両面から、アイデアを形にしたのである。もちろん、まだまだ提案の内容は、磨き上げる余地があり、製図も未完成ではある。それでも、会社の皆さまからは、研修生に改善提案をさせて良かったという言葉を頂くことができた。
 「近頃の若者は・・・」といわれることがよくある。それでも、彼らは、活躍のための機会さえ提供されれば、自ら役割を認識し、分担し、協力して、共有する目的の達成のために、活動することができるのである。多くの場合、学生の企業インターンシップは、見学をしてレポートを書いたり、生産作業に参加したりという範囲にとどまっていると聞く。私たちが取り組んだものは、社内の課題の解決に、取り組むという、深く踏み込んだ内容であった。このような機会が、他の企業においても学生に対して開かれることを切に望む。そのためには、大学関係者も工夫が必要である。
 このインターンシップは、いったん幕を閉じるが、これから継続して、改善提案した治具と作業セルの設計、部材発注、組み上げ、実装、効果の検証と続いていく。研修生たちは、3月下旬に再び同社に集まって、実際のものづくりに取り組むことになる。それまで、研修生には、それぞれの学校で、この2週間の経験を励みとして勉学に取り組んでもらえることを期待する。私は、学校で学ぶべきことは、学校の中にはないと思っている。彼らが学ぶことの目的を今回のインターンシップを通じて見つけだしてくれたのであれば、企画者として、それほど嬉しいことはない。秋からの授業がはじまって暫くしてから、研修生には、改めてインタビューに行きたい。また、研修生と深く関わった社員の方々にも、どのような変化が生じているのかいないのか、改めてお聞きしに行きたい。そのような、継続的な関わりを通じて、この産学合同インターンシップは、より意義深いものになっていくと考えている。
 ありがとうございます。これからも宜しくお願い致します。

2013年8月27日火曜日

感動ある改善提案を

 先週から継続しているサンアクアTOTO(株)での産学合同インターンシップは、7日目を終えた。作業セルの改善提案は、デッサンを終えて、工学系学生によるCAD製図と文系学生による提案の経済評価とメンタル影響の見積もりに入ることになった。

8名の研修生は、2チームに分かれて勢力的に活動を展開している。先週はじめて合った別々の学校の学生がチームとして有機的に改善提案の構築のために協力し合いながら活動している。CAD製図は、会社から車で10分にある北九州工業高等専門学校のCAD室の機材をお借りしている。研修生たちは、授業で図面を作った経験があるものの、実際に会社で社員さんが実作業に使うための治具を設計するとあって、不慣れな中で真剣に取り組んでいる。

製図技能について足りないところは、教員と会社技術者の方の支援を受けながら、着実に作業を進めている。一方で、提案の経済評価とメンタル影響について検討する3名は、ファシリテーターの1人である守屋氏(東京エレクトロン(株)、NPO法人戦略的CSR研究会)のレクチャーを受けながら、必要な情報収集と分析に取り組んでいる。

本研修では、「実作業に取り組む社員さんの立場に寄り添った改善提案を行う」という方針の中で、ヒアリングや疑似障がいを設定した実習を通じて、研修生自身が改善の方向性を模索し、内容を作り上げて来ている。研修生たちの自力の強さを毎日感じている。残りの研修日数は3日である。分厚く、社員さんたちに感動を得て頂けるような改善提案としてとりまとめて行きたい。

2013年8月21日水曜日

当事者に寄り添ってこそ

 サンアクアTOTO(株)での産学合同インターンシップは、2日目を経過しました。この研修では、「体の動きに制限のある実作業者の立場に寄り添った改善提案をする」ということを重視しています。そのようなことは、障がい者雇用会社での研修なのだから、当然のことであると思えますが、特に身体上の動きに制限がない人は、そのことを忘れがちになります。
 昨日の組み立て実習では、研修生は、まず実作業を自分自身の容易な姿勢でやった上で、この作業セルを担当する職員の方に近い身体条件とするために、車いすに座り、右腕にウエイトをつけ、指の関節にテーピングを巻いて握力を制限した形で組み立て作業を行いました。端から見学する時には、簡単そうに見える作業は、実際に取り組むと手際よくこなすことが簡単でないことが分かります。さらに、体に制限をもうけることによって、よりそれが明らかになります。この経験によって、改善提案を検討する際に、必要な条件を当然含めて考えることができるようになります。また、実作業に取り組む職員の方の気持ちを少しでも汲み取れるようになると考えられます。
 この研修メニューは、共にこのプログラムを企画している守屋剛さん(東京エレクトロン(株)、NPO法人戦略的CSR研究会)のご指摘によるものです。昨年度の産学合同インターンシップでは、組み立て実習は行いましたが、研修生は自分の容易な方法での作業に取り組んだのみでした。研修最終日の改善提案の成果発表は、会社の社員の皆さんの前で行うのですが、研修生は自分たちの発案が、社員の皆さんに納得を持って受け入れられたという実感を持てなかったようでした。ことのことは、後に研修生に私たちが行ったヒアリングを通じて見えてきました。それはなぜだったのか。それは、私も含め、研修生が観察者の立場にしかなかったからではないか。相手に受け入れられる提案とは、実際にその機材や仕組みを運用することになる職員の方の立場で考えるプロセスを通じて、はじめて発案できるのではないか。もちろん、ご本人にはなれないわけですが、それに近づこうとする姿勢の中で得る気づきが下支えする発案でなければ意味が薄くなってしまう。その考えに基づいて、組み込んだのが本研修メニューでした。
 2日目を終えた時点で、研修生チーム(2チーム、各4名)は、それぞれの対象とする作業セルと職員さんの業務プロセスをおおよそ把握するという段階に至りました。業務プロセスの中から、より安全で、生産性の高まりそうな課題箇所を取り出し、どのような改善が可能か、知恵を絞るのが3日目になります。どのようなアイデアが出てくるのか、私自身も検討しつつ、研修生を伴走しながら、検討を進めていくことになります。

2013年8月16日金曜日

産学合同インターンシップに向けて

 来週から、2週間は、産学合同インターンシップに取り組みます。TOTO(株)の特例子会社であるサンアクアTOTO(株)の皆さまのご協力を頂くものです。同社は、重度障がい者雇用会社であり、TOTOグループの障がい者法定雇用率2.0%を支えるばかりでなく、広く世界で、障がい者が健常者と共に働く就業環境整備の普及促進にも取り組んでいます。

 今年で2年目になるこのインターンシップには、北九大2名、九女大2名、北九工専2名、有明工専2名の研修生と企業派遣のアドバイザー4名、大学高専教員が参加し、2つの作業セルの生産性向上のための改善に取り組みます。社長からの指示は、「カネを使わずにアタマを使いなさい」というもの。作業セルは、工員の方のリハビリの場でもあるため、全てを機械化・全自動化しては意味がありません。生産性を最大限に高めつつ、障がいを持つ方が力を発揮するための環境を整備することが必要になります。

 工学部や工専を卒業した人は、エンジニアとして、働く人たちのための環境を整備する役割を任されることになります。世の中には、取り組むべき様々な課題がありますが、その1つである障がい者の就業機会の拡大という課題に具体的に取り組み、将来のキャリアにおいて、大切なテーマとして欲しいと考えます。また、マネジメントの仕事に取り組む人にとっても、障がい者雇用を進めるアイデアや引き出しを多く持つ機会になることを望みます。健常者と障がい者とが同じ職場で働くには、まだまだ工夫が必要であるのが、世の中の現状です。障がい者雇用を進めることを目標として、そのための具体的なアイデアを深める訓練として欲しいと考えます。

 それにもまして大切だと思うのは、人の心に触れ、推し量り、思いやる心を深める時間を持つことです。世知辛く、競争の激しい社会の一員になる前に、そこで流されるばかりにならないための価値感を持つこと。そのための機会として、研修生の8名の皆さんには、このインターンシップに取り組んで欲しい。サンアクアTOTO(株)の皆さんの胸をお借りして、力を発揮して、忘れられない夏を作ろう!

2013年8月8日木曜日

振り返りの大切さ

 毎日の振り返りをする時間は、将来に向けて大切であると分かっていながら、それをせずにここ数日を過ごしてきた。日々は、淡々と過ぎていくものであり、振り返ろうが、そうしまいが同じである。多くの動物は、日々を振り返るという発想そのものを持たないが、私たち人間が、大きな記憶容量を持つに至ったがゆえに、その蓄えている記憶に何らかの意味づけを求めるようになったということなのだろう。もてあます情報を整理したい、将来に向けてどんな意味があるのかを確認したい。そういう心持ちが、振り返りという作業を必要としているであると思う。

 一年の計は元旦にありという。それは、みなみ平等に与えられた365日をどれだけ有意義に過ごせるかは、元旦の日にどんな構想を組めるのかによって決まるということだろうか。計画のためには、過去を振り返り、レビューする必要があるだろう。そういう意味では、年に1度だけ振り返れば十分だというようにも思える。毎日、振り返りを行い、記録を付け続けることは骨の折れる作業である。ゆえに、年に1度、そのような日があれば、十分なのかもしれない。しかし、年に1度では、何ヶ月も前のことを思い出すことさえ難しい。とすれば、一言一行でも書き残しておけば、記憶をたどりながら、振り返ることができる。

 いろいろと書いたが、要は、毎日何か書き残して、振り返りをする動機付けを高めようということ。サボりがちな自分への戒めと応援である。