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2015年11月5日木曜日

大学は体験のプロデュース力で勝負しよう

私が客員で来ているODU(オールドドミニオン大学)は、バージニア州立の大学です。こういっては何ですが、アメリカの大都市にある有名難関大学というわけではありません。それでも、大学設備や学生イベント、授業を受ける教室環境の充実など、コツコツと取り組みを進めています。地域の財界やコミュニティとの関わりにも努力を重ねています。


大学のソフト・ハード面での充実に貢献しているのは、寄付金です。ビジネススクールには、1978年の卒業生(工学部)であるマークストロームさんが、約11億円の寄付をしているし、工学部にはバテレンさんという卒業生が、これまで最大の32億円の寄付をしている。それ以外にも、卒業生から寄付がよせられているようです。創設以来、通算で190億円ほどの寄付金を集めています。

ドラガスホール 
140カ国からの留学生がまずはこちらでみっちり英語トレーニングを受けます。

ウェブセンターは、ODUの象徴的な建物
"IDEA FUSION"というコピーが掲げられている

ストローム・カレッジオブビジネスのブルームバーグ・ディーリング・ルーム

ストロームさんの寄付で作られた起業家スタジオ


どうして、卒業生が寄付をするのか。それはきっと、ここのキャンパスで得た経験が、充実したものだったからではないでしょうか。ただただ学生同士で馬鹿をやったという経験だけでなく、大学がプロデュースした物事に感動があり、充実したと思うからこそ寄付をするのではないでしょうか。
カレッジフットボールのホームゲームの日には、
地域のファンが集まってピクニックをして、
そのあとスタジアムになだれ込みます。


もちろん、日本とは、経済状況、租税制度など異なる面がたくさんありますが、根っこのところの「充実した体験」を売っていることが寄付を集められるかどうかにかかわっているのでしょう。

日本の国公立大学は、税金から配分される運営交付金が、毎年引き下げられています。大学は、教育経費の効率化を続けています。外部資金を獲得して、間接経費を大学にもたらすことが求められます。

経費の節約は、財務改善のひとつの方法に過ぎません。むしろ、事業を充実させて、収入を増やすことで、事業経費を毎年充実させていくことが必要なはずです。これは、財務会計の発想では出てこないものであり、むしろ管理会計的な発想に基づくものです。

そのためには、学生に対して、どれけ充実した体験を提供できるのか。何が身につき、成長を実感できたのか。師と呼べる人に出会えたのか。卒業式で泣けるくらい、充実できたのか。もう、大学なんて行かなくても知識を獲得する機会は、世界にいくらでもあります。その中で、ひとつの大学を存続させようとするのであれば、学生の得る体験のプロデュース力が問われるのだと思います。

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