ひとつ大きな疑問を覚えるのは、障がい者比率の高さである。米国では、人口比で日本の2-3倍の障がい者がいるという。これは、障がいの定義の違いによるものなのか、また、認定方法の違いによるものなのか確認が必要である。また、この数字が他国(OECDなど)との比較では、どのような特徴を持つのかを整理していきたい。
- 米国の2010年の障がい者総数はSIPP調べで56,672千人(人口比18.7%)、また、、ACS調べで38,593.8千人(人口比12.7%)であるという報告もある。これらは日本の7,879千人(人口比6.2%)の約2-3倍に当たる。
- 2013年の米国の障がい者の51.9%は、就業人口にあたる18-64歳であり、40.3%は65歳以上である。18-64歳の障がいを持つ民間人の33.9%は職を得ているが、同じ年代の障がいのない民間人の74.2%よりも40.3ポイント低い。
- また、雇用率は障がいの種類によって異なる。最も雇用率の高いのは、聴覚障がいの50.2%であり、視覚障がいの39.6%がそれに続く。最も雇用率が低いのは、身の回りの動作に関する障がい(Self-care)がある人で15.2%、独立した生活に限定性がある人で15.3%である。
- 米国の障がいを持つ16歳以上の民間人の年収の中央値は、20,785ドルである。これは、障がいの無い民間人の年収中央値30,728ドルのおよそ2/3である。障がい者の貧困率は、28.7%であり、障がいの無い民間人の16.6%よりも12.1ポイント高い。
- また、障がいのある人の肥満率は40.1%であり、障がいの無い人の24.9%よりも15.2ポイント高い。障がいのある人の喫煙率は25.4%で、障がいの無い人の16.2%より9.2ポイント高い。
障がいのある人の雇用率は、障がいの種類によって一様ではないことが示されている。聴覚障がいでは、約半数が雇用機会を得ている。これらの障がいを職場で受容してきた経緯や、障がいを補う器具・装置の普及との関わりを把握したい。
また、障がいのある人の肥満率は、障がいの無い人に比べて15.2ポイント高い。肥満は、肢体不自由や他の疾患の原因になる可能性が指摘されているため、予防医療による緩和措置が必要となる。これは、障がいにかかわらず一般の課題である。喫煙率もまた同様である。
障がいは、雇用において負の側面を指摘されがちであるが、それによって、特定の能力を発揮するという正の側面の可能性にも目を捉えるべきである。
例えば、知的障がいのある人は、特定の繰り返し業務に対する集中力で高い生産性を発揮できる。視覚障がいのある人は、高い記憶力と考察力を発揮する。
「適材適所」により、高い生産性を発揮する環境を整理することは、工業化社会の文脈においても合理的であり、個々人の働く権利を満たす社会の仕組みを整理することになる。
そのためには、就業環境の設計について、障がいの有無で分けるのではなく、個々人が「できること」(生産性を発揮できる能力)をまず検討するべきだろう。その上で、勘案するべき事項を付加していくのが、合理的ではないかと考える。
SIPP; Survey on Income and Program Participation
ACS; American Community Survey
(参照) 内閣府平成27年度障がい者白書
Institute of Disability, University of Newhampshire Annual Report 2014
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