どうやら僕は、住んでいる環境が変わっていかないとどうも落ち着かないらしい。20代の頃は、家賃やら仕事やらの関係で、2年に一度は、引っ越ししていたのを覚えている。40代になった今は、決まった職場に通うようになってしまったので、その必要がない。しかし、それでも時々、引っ越しの虫がうずいてしまう。その虫からの熱い引っ越しのラブコールにお答えして、部屋の模様替えなどして慰めるのである。
今朝も、すこし時間があったので、オフィスの模様替えに着手した。冬場には、陽光を求めて窓際に陣取っていたのであるが、6月を越えるとそれでは、日差しが暑すぎていけない。それで、デスクを部屋の内側へと移動させることにした。それによって、デスクとミーティングテーブルの間に、デスクの手元を隠すために並べてあった四つのカラーボックスには、窓際へ移ってもらうことにした。彼らには、これからサボテンなど鉢植え置き場にもなってもらうことにしよう。その置き場ができることで、ブラインドカーテンを下げて、日陰を作ることもできるようになる。
デスクを動かすことで、ひとつ工夫が必要になるのは、パソコンとプリンターとの距離である。僕のオフィスでは、プリンターを本棚に置いてあるので、パソコンの位置が遠くなるとプリンターケーブルの丈が足りなくなる。となると、プリンタを再配置したり、ケーブルの通るコースを換えたりすることになる。
カラーボックスが窓際へ動いたことにより、オフィスの入口から、僕のワークスペースへの見通しがよくなった。少し、風の通りも良くなったような気がする。また、目隠しの裏側のデスク上には、辞書や書面ラックが並んでいたのだが、本棚を整頓し、そちらへお引き取り頂いた。隠して、デスクの手元は、フラットな眺めになった。
それでも存在感を残したのは、大きなドラセナとトラノオである。彼らはオフィスの顔として常に君臨し、来客に印象を与え続けてくれている。彼らには、L字型のカーブの位置、パソコンのディスプレーの裏側に陣取ってもらっている。いつもディスプレー越しにこちらを眺めて、仕事をチェックしているのが、彼らなのである。もう10年以上の付き合いになる。ドラセナを買って来た時には、本の30センチほどの小枝を差したような鉢植えだった。トラノオは、職員さんが常駐している別のオフィスの片隅で、忘れられて息も絶え絶えだったのを引き取ってきて鉢に植え直してあげた。その彼らが、いまは立派に成長している。
目下の課題は、断捨離である。特に限りある本棚を占拠している本を勇気をもって手放すことを真剣に考えなければならない。「収納破産」を防ぐには、現存の収納の範囲で物を持つという約束を守ることである。いくらでもオフィスを拡張できる財力があれば、いけいけドンドンであるが、今のところは、そういう分けにもいかない。引き受け先を探すといっても簡単にはみつからない。さて、どうしたものか。売るわけにはいかない本は、サヨウナラするしか手がない。
模様替えのついでに、古紙回収に出す梱包段ボールなどを整理した。それで、ずいぶんと哀れだったオフィスの入口にはスペースができた。スチール壁に、マグネットで引っかけてある書類も、半減させた。よくよくみると意図もなく引っかけたままになってしまっている書類が少なくない。分類して取りまとめるとスーペースが、半分近く広がった。
たまの模様替えは、自分の持ち物を見直すよい機会になる。意識下の置いて管理するものを増やして、つねに持ち物の点数を最適化していくことが、効率的な仕事の空間を作ることにもなる。引っ越しが好きな僕は、いつか、大々的にオフィスをリセットする日を夢見ながら、また、ちょこちょこと模様替えを続けていくのだろう。
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