食糧不足や安全衛生のリスクへの対応策として、バイオテクノロジー 分野における「遺伝子ドライブ」技術が近年注目されている。レンセラー工科大学のC.H.コリンズ博士によれば、遺伝子ドライブは、自然に生じている現象であるが、それは人為的に起こすことも可能であり、人類に恩恵をもたらしうると指摘している。
特にCRISPER(クリスパー)遺伝子編集技術の開発が、この動きに拍車をかけ、2015年には、酵母やショウジョウバエ、蚊の集団に対して適応した研究論文が複数発表されているという。これらの研究にはDARPAやゲイツ財団も関心をひめしており多額の資金も拠出されている。
一方での懸念事項は、遺伝子ドライブ技術に対する一般市民の反対や政治的な反発につながる事故や失策発生である。その予防策としてを、2018年には、国際的なワーキングループにより、研究室から野外試験に至る研究取り扱いのロードマップが作成された。わたる研究チームでは、遺伝子ドライブが容易に働かないようにするための仕組みを開発したという。
(参考)日経サイエンス2019年4月号, pp.55-56
雑感
人類社会の持続性を担保するための科学技術は、その恩恵を受ける公衆の価値観によって発展が左右される面がある。特に、新しい技術に対する恐れや嫌悪感は、科学的合理性を押しつぶす可能性がある。科学分野と一般社会とのコミュニケーション、インフォームド・コンセントは重要事項である。特に情報の加工の仕方や伝え方、それらの情報を扱う科学者の態度は、公衆にとって重要な判断材料となる。
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