こんにちは。辻井洋行です。
あなたは働くなら大きな組織がいいですか、それとも小さな組織がいいですか。取引コスト経済学は、あなたの指向性に答えてくれるかもしれません。この経済理論は、ロナルド・コースが1937年に基礎を作り、オリバー・ウィリアムソンが世に広めたと考えられています。
この理論は、どうして組織があるのかという質問に答えるものです。基本的な考え方は、個人と個人の間の取引に掛かるコストが割高だなという時に、私たちは組織を作ってそれを相殺してしまうというものです。
日常生活で、必要なものがあれば、私たちはスーパーへ買い物に行きます。一般的には、スーパーでは定価販売なので、対価を支払ってものを手に入れます。ただし、仮に、スーパーが客の顔を見て値段を決めたり、売ってくれたりくれなかったりしたらどうでしょうか。そんな不安定なスーパーで買い物をする度に気を揉んだり、不安になったりしたくないですよね。
もしあなたがお金持ちであったなら、どうするでしょうか。例えば、そのスーパーを丸ごと買い取って、傘下に収めてしまえば、自分の思う通りにコントロールできるようになります。そのように、取引上の不確実性へ対応するための労力を下げることが組織化の目的となります。組織は、市場取引の不確実性を内部化するために存在するというのが、この経済理論の説いていることです。
ただし、組織は大規模化すればそれだけ組織を動かすための労力を要するようになります。これを管理コストといいます。組織が大きく成り過ぎて、経営環境の変化に対応するスピードが遅くなれば、分社して機敏に動けるように作り替えることがあります。
このように、ちょうど良い組織の大きさは、管理コストと取引コストのバランスが取れる点で決まると考えることができます。
もし、あなたが市場取引の不確実性をものともせず、むしろ、波乗りを楽しむようにやりこなす素質の持ち主であれば、他者とのフラットな関係の中で、自己実現に取り組んでいくことを望むでしょう。一方で、あまり不確実性を好まず、組織の中の役割を担うことで、自己実現を目指すのであれば、なるべく大きな組織に身を置くことを望むのでしょう。
この取引コストという概念の発見によって、なぜ組織があるのかという疑問に答えることができるようになりました。世の中には、なぜ宇宙はあるのかというまだ解かれていない問いがありますが、経済学の世界においては、それと同じくらい重要な疑問が、この理論で解かれたわけです。
組織の内にいる人は、お互いに協力することが期待されています。一方、組織の外にはそんな期待を寄せて良いのかどうか分かりません。そんな不確実性を下げたり、たとえ管理コストを掛けるにしても。組織(集団)は、私たちのそのような指向性が生み出したものといえそうです。
0 件のコメント:
コメントを投稿