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2021年2月2日火曜日

つぶしが効かないより効く方が好まれることをリアル・オプションという

こんにちは。辻井洋行です。

自由でないより自由な方がいい。つぶしが効かないよりは効く方がいい。こういう直感を説明していれるのが、「リアル・オプション」という考え方です。 

これは、もともとは金融工学の分野で発展した資産売買の権利の価格を決める理論を元にしたものです。特に、先のことを見通すことが難しい時には、評価が定まってしまっているものよりも、評価に柔軟性を見込むことのできるものの方が、高い評価を受けて売買されることになります。

例えば、おなじみのディアゴスティーニ社の工作キットは、最後まで買いそろえると7-8万円くらいを支払うことになるのですが、創刊号は600円くらいに設定しています。それによって、消費者は、始めから大きな投資をせず、気に入らなければいつでも止められるというオプションを買っていることになります。

見方を変えれば、消費者にとっては、創刊号には7-8万円の価値があるので、ついついお得感から買い始めることになります。もし、面白いかどうか分からない、煮ても焼いても食えないセットをいきなり7-8万円で買わされるとすれば、そのセットには600円くらいの価値しか見いだせていないということになるでしょう。

また、日本の伝統的な大企業で、ゼネラリストが重宝される職場があったとしましょう。そこでは、会社の都合で人材を色々な部署へ配置転換させることになります。その職場に、専門性を極めた専門家を採用してしまうと配置転換の柔軟性が損なわれてしまいます。それよりは、地頭がよくどんな部署でも適応して仕事をしてくれそうな学卒者を採用する方が、都合がよくなります。

日本の企業で、専門性の必要な技術系の職種以外に、院卒者が採用されて来なかったのは、そのような事情が効いているのでしょう。組織の都合を最大化してくれるオプションは、専門性にこだわらない地頭の良い人ということになります。一方で、専門性が必要な職場や職種では、専門性の高さが不確実性に対処するために有利になり、オプションとしての価値が高くなります。

こういう判断は、感覚的に行われていますが、「リアル・オプション」という概念を与えることによって、論理的に組み立てて思考・評価できるようになるし、概念としての共通理解があれば、一言で説明がつくので便利ですね。



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