こんにちは。辻井洋行です。
ビジネスを大成功させていた会社が、大きく業績を取り崩してしまう。いい客筋を捕まえていたはずの会社が、思うように集客できなくなってしまう。事業収入が安定していたために、市場の変化についていけなくなった。
わたし達が働く会社や団体には、上に書いたような危機が早晩訪れます。それは、そこで働く人のもつ慢心が原因です。わたしたちは、先行きが不安であれば、あれこれと情報を集め、最善の策を打つために活発に動き回ります。それが、会社の成長や継続のために合理的な行動です。それが、いったん最適な仕組みを作り上げ、高い収益性や顧客満足を実現してしまえば、それ以上の変化を起こす必要がなくなります。それもまた、会社の目的のために合理的な行動ということになります。
ただし、会社を取り巻く環境は常に変化します。会社内のシステムが完成してしまった途端に、そのシステムと環境との間にズレが生じます。わたし達が、いったん築いたシステムに慢心してしまうとそのズレに気づかずに過ごしてしまうことになります。
わたしたちに、そのようなズレに気づけない性質があること、合理的に行動しよういう意思を持ちつつも、限定的な合理性の範囲でしか思考できない性質があるということを意識するだけでも、慢心を起こすリスクを下げることができるでしょう。
そのような限定合理性を人間の基本的なモデルとして、経済や経営組織を検討する必要があると提示したのが、ハーバート・A・サイモン(1916-2001)です。彼は、「組織における人間の限定合理性と意思決定過程の研究」で、1978年にノーベル経済学賞を受賞しています。また、彼の後進たちによる組織行動理論をカーネギー学派と呼びます。
カーネギー学派の貢献は、人間像を新しく定義し直したことです。安定の時にこそ、外的な変化の予兆を掴むための情報収集や分析を止めるべきでない理由を論理立てて説明したことにあります。最適なシステムを完成させたら、直ぐにそれを作り直すために動き出すという一見すると非合理的な行動が、中長期的には合理的であるということを踏まえておくこと。経営者がそのような行動を取ること、組織を再構築する仕組みを組み込んでいくこと。生物学でいう「動的均衡」の状態を失うときが、会社・団体が瓦解するときだということを教えています。
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